『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』〈映画〉鑑賞の感想 (途中からネタバレ有り)

いよいよ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』が公開され、アニメファンの間ではじわじわと話題が広まっていっております。

これから日本でも一定の知名度を得るであろうこの映画の感想を、ネタバレを含めて書いていきます。

気にはなっているけれど、映画を観て失敗したと思いたくない人などの選択の材料にもなればと思います。

『羅小黒戦記 THE LEGEND OF HEI』(日本語字幕版)、『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』(日本語吹き替え版)は、内容に差異がないので、両方についての感想記事として書いていきます。

あらすじ

妖精はただの伝説ものだと思われるが、本当はこの世界に実在するものだ。妖精はすべてが怖くて悪いものではない。人間の格好をして人間社会に溶け込むものもいれば、山の奥に隠して暮らすものもいる。
猫の妖精羅小黒(ロシャオヘイ)は、森で楽しい日々を過ごしていたが、人類の開拓により、森を追われ、あちこちを放浪し、暮らせる場所を探す旅に立った。
旅の途中で妖精と人間の仲間たちと出会う。そこで出会ったのは、同類のフーシー(風息)と人類のムゲン(無限)。小黒(シャオヘイ)は二人と一緒に、信頼・理解・責任を学んでいき、ムゲン(無限)と深い師弟関係を築いた。
果たして小黒(シャオヘイ)は、安心して暮らせる所を見つけられるのだろうか?

https://heicat-movie.com/ – 映画 羅小黒戦記 (ロシャオヘイセンキ/THE LEGEND OF HEI) 公式サイト

総評

こんな人は楽しく鑑賞できます。

  • キャラクターを好きになるタイプの人
  • 中華風ファンタジーが好きな人
  • 綺麗な作画が好きな人

ストーリー展開に複雑さやどんでん返し等期待したり、シリアスな作品が好きな人などにとっては、物足りなさを感じるかもしれません。
それと、デフォルメのきいたキャラクターデザインのため、

「ライトなアニメファンでも楽しく観られる」そんな作品だと思います。

↓ ネタバレなしの記事はこちら ↓

注意

ここから先は内容のネタバレを含みます。

ストーリーは王道

雄大な自然

穏やかに暮らしている黒猫のシャオヘイ。その環境が脅かされるところから物語が始まります。

黒猫の妖精シャオヘイは、緑豊かな森の中で暮らしていました。
鮮やかな緑と、たくさんの生き物、澄んだ水。
泰然とした豊かな自然が、シャオヘイの故郷でした。

しかし突如不穏な気配を感じます。逃げ惑う動物たちとは逆方向に、正義感の強いシャオヘイは駆けだします。
そこには人間による開発の手が迫っていました。

対抗しようにもなすすべなく破壊されて行く自然。
やがてシャオヘイは地面にぽっかりと空いた大きな穴に吸い込まれ…。

という夢から醒めるシャオヘイ。
今暮らしているそこは、人間によって開発された都市。
薄暗く、重たい空気の中に雨が滴ります。

シャオヘイのしっぽの一部であるヘイシュウは「居場所はきっと見つかるよ」と話しかけます。
ヘイシュウの言葉は、住処を無くし今も放浪し続けるシャオヘイにとっては、一縷の希望なのでしょうね。

ここまでセリフもほぼなく、これまでの牧歌的な冒頭と、そのあとの故郷の夢は、音や映像だけで緊迫感を表していて、シャオヘイが危機から逃げ回る様子に、あっという間に応援したい気持ちが沸き上がりました。
そして、シャオヘイにとって人間が、あまり好ましくない存在と思っていることがよくわかります。

不穏な襲撃者

都会で暮らしていく中で人間に襲われて、ここでシャオヘイは冒頭で見せたような動きで逃げ回ります。
このまま逃げ切れー、と私の願いもむなしく壁際に追い込まれます。
しかしここでなんとシャオヘイは巨大化して化け物のような姿に!
まさかあんなかわいいフォルムからこんな姿になるとは思ってもみませんでした。
窮地を救ってくれた人物の名前はフーシーと言いました。
観ていて、まだなんとなく警戒を解き切れないのですが、とりあえずシャオヘイと同じく普通の生物ではないことは分かりましたので、ずっと独りだったシャオヘイにとって大きな出会いだと少し安堵しました。

フーシーに連れられてきた場所は、かつてシャオヘイが住んでいたように自然が豊かで、精霊のようなものも暮らす場所。フー氏に対する祓いきれなかった疑いも、この光景を見れば彼が悪いやつではないことがわかります。
フーシーの仲間であるシューファイやロジュ、テンフーとも出会い、シャオヘイも人間の姿に変化します。
かわいらしい声と見た目と、その年齢と性格を思わせるちょっとした小生意気さがいかにもかわいらしいです。

「これからはここが君の家だ」
フーシーの言葉は、寄る辺のないシャオヘイにとってどれほど待ち望んだことだったでしょうか。
シャオヘイにとっての家、居場所ができました!
寝床で猫の姿になってはしゃぐシャオヘイが何ともかわいかったです!

ただそこへ、強力な力を持つ敵が襲い掛かってきます。
無表情な彼の名はムゲン。人間であるにもかかわらず、特殊な力を操りフーシーらに襲い掛かってきます。
圧倒するその力に抗戦しながらも撤退していくフーシー。
異変を感じたシャオヘイは勇敢にも立ち向かいますが一蹴されます。

何とかフーシーらは逃げきれるものの、シャオヘイはムゲンのいるその場に取り残されてしまいます。
無表情で何を考えているかわからない彼と共に残されて、この先シャオヘイにとって厳しい試練が待っているのではないかとはらはらします。

ムゲンは、取り残されたシャオヘイを襲うでもなく逃がすでもなく、捕えます。
無表情で冷酷な印象のムゲンですが、すぐにシャオヘイをどうにかしようという意思はないように見受けられます。
ですが、逃げたり抵抗しようとしたりすれば、ムゲンの縦横無尽に操る金属板によってすぐさま捕らえられます。なすすべなしです。

そのままムゲンに連れられ、彼の作ったいかだで島を後にします。
せっかく見つけたと、たどり着いたと思った「自分の居場所」。
みるみる小さくなっていくその景色につらそうな表情を浮かべるシャオヘイ。
周囲は一面の海で、太刀打ちできない相手と共に、これからどうなるのかとまさに大海へと放り出された感覚になりました。

航海

周囲一面海だけが広がる中を、いかだで疾走するムゲンとシャオヘイ。
逃げ出そうとして海に飛び込み溺れるシャオヘイはちょっと無鉄砲すぎですね(笑)
ムゲンは「館」にシャオヘイを連れて行こうとしているようですが、それがいったいどういうところなのかわかりません。
ムゲンの属するコミュニティの本拠地っぽくは感じるものの、そこへ連れていかれたらどうなるのか不安が募ります。

やがて大嵐に見舞われところ、大波にさらわれそうになるところを、球体状の結界が張られ守られます。
ムゲンはそんな能力も使えるのか、と思ったのですが、彼も不思議そうに見まわしてます。
気絶したシャオヘイが身じろぎするとその結界は消えてしまいます。シャオヘイが出現させたものということがわかりました。

嵐を抜けると、ムゲンは能力で濡れた服の水分だけを取り除きます。何その能力欲しい。
結界のようなものを出したことを当のシャオヘイは覚えていないよう。
ムゲンは突如地面に白く光る円を出現させその中に飛び込む。
ムゲンはシャオヘイをその中に誘うが、シャオヘイは入りたがらない。
しかし敵の作った謎の領域に入りたがらないのは当然でしょう。
だけど結局は入る羽目に。

領域

その中は真っ白な空間で、四阿を備えた小さな一軒家がぽつんと建っていました。
外界に干渉されず、入り込んだ者はその領域の持ち主(ここではムゲン)の思いのままに操られるような場所。
金属板を操るムゲンですが、この空間の中ではシャオヘイの行動を物理的に制限できるよう。

外に出されたシャオヘイは、なぜそのような空間を教えてくれたのをムゲンに聞く。
確かに、拘束するにしてもそこに放り込んでおけばいいし、そうしないのであればなぜこのことをわざわざ教えてくれるのでしょう。
それに対するムゲンの回答は、「詫び」でした。
同じ能力の素養を持つものに対して、何かしらのシンパシーを感じたのでしょうか。

特訓

金属を操る能力の特訓が始まります。ここはダイジェストで描かれていました。
そんなに簡単に行くわけ…とも思いましたが、めきめきと才能を開花し、最終的には自らいかだの動力とするまでに操れるようになりました。
この時楽しそうに拳を突き上げるシャオヘイもかわいかったですが、その後ろで「本当に才能があったとは…」とかつぶやいているムゲン。いやいや、あなた「才能がある」って確信持たずに言ったんですか?!

館の妖精

目的地に対して1000キロ以上南に下った場所にたどり着いていたムゲンたち。
ムゲンはちょっと方向音痴気味なのかな?
この辺りで私はだいぶムゲンのことが好きになっています。
ご飯屋さんでの支払い時のやりとりなど、戦闘以外で抜けたシーンが多く、これは結構かわいいやつのでは…。

道中ムゲンを訪ねに妖精たちがやってきました。
彼らは「館」に住む妖精たちで、要するには館とは、人間によって住処を失くした妖精たちが集まって暮らしているところらしい。
これまでの旅でのムゲンの人間性、やってきた妖精たちの人当たりの良さ、館の性質とシャオヘイの境遇を考えると、私は館へ向かうほうがいいのではと思いました。
ムゲンに対する印象が冒頭とは全然変わってきていますね。

しかしシャオヘイは、出された食べ物に目を輝かせて夢中でほおばっています。かわいい。

都会へ

ムゲンとシャオヘイはなおも館へと向かいます。
館は大きな都市である龍遊市に入口があるらしく、そこに向かって旅を続けます。
その間、シャオヘイはたびたび人間と触れ合うことがあり、徐々に警戒が解けていきます。
原付バイクを借りて疾走中、ムゲンをナンパして、男とわかった瞬間去って言ったナンパ男たちよ、ムゲンは美形だからそれはもったいないぞ!(え?
道中泊まったホテルにて、ムゲンは改めてシャオヘイを館に行こうと誘います。
館で暮らすことは、ムゲン始め、妖精たちを認知し支援する人間たちともかかわりを持つことになるためか、シャオヘイは明確に回答はしません。
ただ、人間にも良い奴がいることがわかった、と、口にします。

人間に住処を奪われて敵視しながらも、多くの人に触れる経験で考え方を改めるシャオヘイは賢い子ですね。
まだ幼いから考え方が柔軟なのでしょうか。
何歳なのかはわかりませんが、これまで信じてきた価値観を揺るがされて、落ち着いて考え整理できています。
これは私も見習わないといけないところです。

ここまで一緒にいたからか、シャオヘイは自分から素直にムゲンについていき、拘束されることもなくなっています。
街では花を配達している花の妖精にも出会い、人間社会で妖精が楽しく過ごしている様子も見られました。

地下鉄での襲撃

地下鉄に乗り込もうとする二人、後ろに並んだ若い女の子たちがシャオヘイを見て「かわいい~」みたいな反応を見せて、思わずうんうんと思っていたところ。
その子らも含めて周囲の人たちの眼から精気が消えて一斉に襲い掛かってきます。
これは映画冒頭でシャオヘイを襲ってきた三人組と同じ雰囲気で、あの人らは操られていたのかと、私はこの時に気付きました。
応戦するさなかにシャオヘイは二人組のアクウとイエツに気絶させられ攫われます。
地下鉄で遠ざかる彼らをムゲンは追いかけます。

地下鉄内では、シャオヘイを小脇に抱えた二人組が怪しまれます。態度や状況を見れば、そりゃあ怪しまれるよねって感じなのですが、観てるこっちとしては「ちょっとあんまり関わらないでおいたほうが…」と一般人相手にはらはらします。

やがてシャオヘイが目を覚まし、ムゲンが追い付いてその場で戦闘開始。
その戦いで穴の開いた天井から、地下鉄の擁壁が崩落して迫ってきます。気を失った母親を起こそうとする小さな女の子の上に落ちてきそうな鉄筋入りの瓦礫を、シャオヘイは金属を操る能力を使っていとも簡単に取り除き助けます。女の子はシャオヘイの去り際に「お兄ちゃん、ありがとう」とお礼を述べます。
それまで間、シャオヘイはほぼほぼ無表情で、どういう感情で親子を助けたのかはよくわかりません。女の子からお礼を言われた後も目立つ反応はしませんでしたが、屋根に出てムゲンと合流したとき、よくわからな複雑な感情を抱いたことを吐露します。
シャオヘイはたぶんここで、価値観に何かしらの揺らぎがあったのではないでしょうか。

その後、フーシーの仲間によってシャオヘイは再び連れ去られてしまいます。
地上に出て高架を走っている地下鉄ですが、その桁が壊されてムゲンは全力で地下鉄の大破を防ぎます。
このシーンはいつぞやの中国本土での列車事故を思い起こさせますが、映画とはまったく関係のない話なので忘れましょう(笑)

ムゲンの怒り

人間を操っていた妖精もフーシーの仲間で、映画冒頭でのシャオヘイのピンチは作られたものだとわかりました。
多くの一般市民を巻き込み、再びシャオヘイを連れ去ったフーシー一派に、ムゲンは怒ります。ここにきて初めて激情を表した気がします。
シャオヘイとの道中「陸で飛んではいけない決まり」と言っていましたが、もうそんなことを言っている場合ではなく、ムゲンは空を飛んでシャオヘイ救出に向かいます。

フーシーとシャオヘイの再会

本来であれば待望の再会であるはずなのですが、これまでのムゲンとの旅程、今フーシーが行っていることを見ると、心から喜ぶことが出来ません。
これまでの旅でシャオヘイは考えが変わったようで、フーシーにこんなやり方はダメだと訴えます。

ここでフーシーが改心など当然してくれるはずもなく、フーシーはシャオヘイの領域の能力を奪ってしまいました。この時がロジュがそれを必死になって止めようとしていて、彼は心からシャオヘイのことを仲間として思っていてくれたんだなと少しうるっと来てしまいました。

しかしロジュの必死の訴えもむなしくシャオヘイは気を失い、それに伴って髪も白くなってしまいます。
WEB版を知っていると、ここでこうなったのか、という複雑な感情がありました。

フーシーとムゲンの戦い

シャオヘイの奪った領域を自らのものとして開放していくフーシー。そしてそこへ参じたムゲン。
フーシーは物語を通して感情を乱すことなく、強い意志を感じます。
対するムゲンは、冒頭の冷酷さを思わせた雰囲気は消えて、怒りの感情を表しています。
今や心情的にはムゲンを応援してしまいます。

中心に吹き抜けのある大きなショッピングセンター内で、建物の損壊を気にすることなく激しく戦う二人。
建物を斜めにくりぬいていくシーンは絵的にも超人的な戦いであることを見せつけられます。
ただ戦いは冒頭でも見た通り実力はムゲンの方が上で、フーシーは圧倒されます。
いよいよフーシーが追い込まれたところで、シャオヘイから奪った領域が街を飲み込み始めます。
それまでにフーシーを抑えておかないと負け確なだけに、ムゲンの最後の追い込みが間に合わなかったのが悔しかったです。

領域内は領域の持ち主の思うがままの空間ですから、そこにムゲンが入っていきフーシーに戦いを挑むも不利な状況。
もうこれは正直どこに逆転の目があるのかわかりませんでした。
フーシーに太刀打ちできるのはムゲンしかいませんし、他のメンバーがその実力差からか助太刀に入る雰囲気もありません。不安と心配の時間が続きます。

館からの応援、ナタ、空間転移

球体状の領域は急速に膨らんでいき街を飲み込み始めます。
一般の人間たちが逃げ惑います。妖精たちは人間に正体を悟られてはいけないのに、もうそれどころではありません。
緊急事態だから姿を見られることも構わず人を助けていきます。
パニックのうえ獣人が現れればそりゃあ悲鳴の一つも上がりますよね…。

のっぴきならない状況になってから、館の仲間によって、一斉に人間を町はずれの丘の上に転送させました。
これってこの作品中に出てきた中でも、領域に次ぐ桁外れの超能力ではないですかね?

フーシーの仲間に押され気味の館のメンツ。そこに現れたのはナタ。あっという間に仲間を助けて戦闘相手を制圧します。
領域の中にいるムゲンの手助けをしてくれるようで、これはよい流れだと思いきや、どうやら領域内にはもう誰も入れないよう。
カッコつけて向かっていたナタは恨み節を吐いていました。この子はかわいらしいこですね。
この世界では実力者ほどかわいいのでしょうか?
見た目もかわいらしいのに、それは彼自身がキャラ付のためにやっているみたいです。
頭の付け毛を取った瞬間に周囲は「誰」と突っ込んでいましたけど、これは本気のツッコミですかね?
そのあたりは判別できませんでしたが、わざとそのようにいじっているのでしたらグッジョブです(ぇ

フーシーとムゲンとシャオヘイの決着

シャオヘイが生きていました!
まあWEBアニメの前日譚ということで死ぬことはないとはわかっていましたが。
真っ白な背景に目を覚ましたシャオヘイ。見えない球体の中に閉じ込められているようです。
空間は無音で、その虚無感が不気味です。

場面は切り替わり、苦戦しているムゲン。彼の首元にはヘイシュウが潜んでいました。
そしてどういう理屈か、ヘイシュウとシャオヘイの居場所が入れ替わりシャオヘイがムゲンのところに現れました!
まさかそのような形でシャオヘイの侵入が叶うとは思いませんでした。
しかし領域を奪われた上に戦闘能力は未知数のシャオヘイ。一体どうなるのか。

だけど私のその不安をよそに、「元々この領域はシャオヘイのものだ」というムゲンの言葉通り、勢いで押し始めます。
領域内の街中のありとあらゆる金属を集めてフーシーへ一斉放射するなど、シャオヘイの能力の成長には目を見張るものがありました。
街が粉砕されて、数キロにわたるほどの扇型に瓦礫が積み上がります。シャオヘイはどれだけ腕を上げたのでしょうか…!
しかしフーシーも雄叫びを上げるほど全精力で応戦してきます。ここまで、劣勢な時も感情を荒らげなかったフーシーもここでは死に物狂いで攻撃を仕掛けてきます。

そしてやがて戦いは佳境に入り、ムゲンとシャオヘイはフーシーに隙を突かれてしまいます。
はるか上空より、能力による攻撃によって高速で地面に向かって落とされて行く両者。
フーシーは技と領域による能力をかけ合わせているようで、シャオヘイらにも焦りの色が。
ここでまともにダメージを受ければいよいよ敗戦濃厚となってしまうので、思わず手に汗を握ってしまいます。
正直それでも主人公だし何とかしてしまうのでは思っていたのでしっかり地面に墜落し驚きました。

まともにダメージを食らってしまっては勝てないのでは、と思ったその時、シャオヘイは領域を出現させて無傷!
領域の効果で地面は半球状に抉り取られていました。
しかし、領域の中で領域を出せるものなのでしょうか?
そもそもシャオヘイは領域を奪われたのでは?

なんにせよさらなる力を発揮させたシャオヘイによって、この領域内ではシャオヘイにも制圧権がもたらされ、フーシーは抗戦するもなすすべもなく捕らえられてしまいました。

これで戦いの決着はつきました。
しかしフーシーは、「シャオヘイ、ごめんな」という言葉を残し、自らの能力で大樹を生やし、都会の一角を自らもろとも飲み込みました。
人間によって作られたものばかりの街の中に、ビル一棟ほどの大樹。
この地はフーシーの故郷であり、彼自身の矜持か、命と引き換えに文字通り根を下ろす形でこの騒動に終止符を打ちました。
ムゲンとシャオヘイはただ黙ってそれを見ていました。
妖精たちは人間より長生きですし、価値観も違うので、その判断にどのような感情抱くのか私にはわかりませんが、シャオヘイが悲しむ様子がなかったことからも、少なくとも人間における死とはまた別の決着なのかもしれません。
フーシーの最後の一言にはたくさんの意味が込められているようで、そこで思わずうるっと来ました。

館にて

空に浮かぶ雲の中、一見ラピュタかと思わせるような場所に、館はありました。
とはいっても外見は中華風ですので、千と千尋の雰囲気も…。
(WEBアニメ版を見ると作者はジブリ好きなのかなと思わせられます)
そこにはいろんな見た目の妖精たちが多く住んでいました。

桟橋のようなところに降り立った、シャオヘイ、ムゲン、ナタ、シュイ、キュウ爺の一行。
その雰囲気に印象はいいようなシャオヘイ。
ようやくシャオヘイにとっての「家」が見つかり、本当によかったです。
しかしムゲンはその館に入ろうとしないどころか、踵を返そうとしています。
館にはムゲンを快く思っていない妖精たちもいるそうで。
去って行くムゲンの背を見て、これまでの旅路を思い返すシャオヘイ。
最初は憎き相手として出会ったけど、思い出す旅の記憶はシャオヘイにとって心地よいものだったのか、瞳を潤ませます。
やがてそれは溢れ出して雫が滴ります。
そして、「師匠ーーーー!!」という叫び。
感涙不可避でした。
定住できる「家」よりも、師匠であるムゲンと共に各地を回ることを選んだシャオヘイ。
胸に飛び込んできたシャオヘイを優しい笑顔で受け入れるムゲン。
二人にとって、お互いがかけがえのない感情で結ばれたのでしょうね。
心が温かくなったところで物語は終わります。
これからも二人で各地の妖精たちに関わって行くんでしょうね。

エンディング

エンディングが流れるバックでは、本編のキャラクターのカットの他に、WEB版アニメのキャラクターたちも登場します。
WEBアニメ版がスタートする前の時間軸のようで、主人公シャオバイと友達のシャンシンの会話が描かれています。
WEBアニメ版の中でもなかなか個性の強いキャラのシャンシンが、未来を予知しているような言葉を発しており、WEBアニメ版を知ってる人からしたらニヤっとなる会話をしていました。

魅力的なキャラクター

シャオヘイ

黒猫の妖精の男の子。幼いですが勇敢な心を持ち、どんな相手にも物怖じしないところは勇ましいです。

半面幼さゆえの猛進にも見えますけど、自分で見聞きしたものをしっかり考えて意見するなど賢いところもあり、言われるがままに流されがちな私は見習わなきゃと思わされました(笑)
そして子供らしく生意気なところもありつつ、懐いた相手には純粋な笑顔を見せてくれます。
この二面性がかわいらしいですね!

おいしいものを食べた時に目を輝かせるところ、これが愛らしくてついふふっと笑みが出てしまいます。

ムゲンと過ごすうちに人間に対する見方が変わっていき、無意識的に人間を助け、感謝の言葉に複雑な感情を覚えるなど、短期間での心の成長を、観ている側としては感動します。
多くの妖精と人間を見てきて、最終的にフーシーの前に立ちはだかることが出来ほどの強い意志を持ったシャオヘイには、ただただ感嘆するしかありません。
そしてあれだけ「家」を探していたシャオヘイが最終的に選んだのが、定住できる館ではなく、“執行者ムゲンと共に各地を動き続ける”ことだったということが、とても愛らしく思いました。

フーシー

フーシーは、物語では敵役というポジションで描かれていますが、自分の信念を最後まで貫いたのだと思いました。
仲間思いで、強い相手にも立ち向かって行く勇気はとても格好いいです。
だけどそのために強引な手段に出るところもあり、しかしそれは彼の立場からすれば理解のできることです。

シャオヘイに近づいたのは能力の珍しさからでしたが、シャオヘイを自分たちの元へ招き入れて家を与えたのは、間違いなく“人間に住処を奪われた仲間”を思う優しさであったと思います。
最終的に大事件を起こしたものの、それでも多くの仲間がフーシーに付き従い続けたところを見ても、ただの悪者ではなく仲間思いだったことの証拠でしょう。

そして、自らや多くの妖精たちのために戦い続けるという一つの“正義”のために先頭に立ち続けたことで、フーシーを慕う妖精も多かったのでしょう。
そして最後のシャオヘイに対する「ごめん」は、妖精たちの世界を取り戻せなかったこと、能力を奪ってしまったこと、いろんなことに対する意味がこもっているように思いました。
利用し、命に係わる能力を奪ったシャオヘイのことも、フーシーは心から大切に思っていたのだと思います。

多くの仲間には恵まれたものの、最後にあれだけの騒動を起こすほど故郷への思いと人間への憎しみ強かったフーシーは、故郷を追われて以降、心から楽しい時を過ごすことが出来たのでしょうか…。

ムゲン

序盤と終盤で一番印象の変わったキャラクターです。
強大な敵として現れ、シャオヘイはどうなってしまうのか、つらい環境を乗り越えていかなきゃならないのかとはらはらしました。
無表情で冷徹ではないかという第一印象。

しかし、シャオヘイと二人で移動し始めるころには、作品の演出も相まって意外と悪人ではないような雰囲気。
合間には天然な性格も垣間見え、次第に好感を持てるようになっていきました。

最終的にはシャオヘイに対して保護者のように思ってそうに見え、フーシーの凶行後の感情を表に出したところなど、これまであまり見せなかった人間味が溢れて一気に心を掴まれました。
館に移動中に「街では飛ぶことが禁止されている」と言っていたのにもかかわらず、(状況が状況ではありますが)地下鉄での戦闘後にシャオヘイを助けるために浮遊するところや、「師匠!」と抱き着いてきたシャオヘイを優しい笑顔で受け入れるところなど、シャオヘイに対する愛情を見せるシーンは観ていて思わずにやついてしまいました。

ハイクオリティな作画

戦闘シーン

序盤は体術や能力を駆使しながらの戦闘を、さまざまなカメラアングルから描かれていました。
3DCGではなく、2Dアニメだと思うのですが、それであのクオリティの作画はさすがです。
私の動体視力ですべての動きを追いきれたわけではないのですが、絵柄も相まってか、全体的にスピーディーに進みます。
技の前にタメを作るようなシーンもあまりなかったように思います。
ですので、常にキャラクターかカメラが動いている、そんな感じでした。

終盤での戦闘は都会の街中ということもあり、画的な迫力に重点をおいた描写でした。
背景の建物から小物に至るまで、ほとんどが3DCGで作られているように見えました。
領域内の街中の金属を集めるシーンや、ムゲンとフーシーの戦いにおける建物の破壊など、視覚的に派手な演出が多くてその戦闘の激しさが感じられます。

生活背景、街並み

冒頭の自然の風景、中盤の海のうねり、館の浮かぶ空と雲。
優しく柔らかい色調で、それでいて薄すぎなくはっきりしている色味で描かれています。
自然の風景はしっかり描き込まれているのに、ごちゃごちゃしていなくて観やすい画面です。
キャラクターがデフォルメが利いていて、自然の背景は主線がほぼなく、絵柄の差異で誰がどこにいるかわかりやすいです。

対して都会の背景ははっきりくっきりと描かれていて、自然と比べて視覚の情報量を増やしてあえて描き分けているようにも思えました。

ムゲンの領域内の家屋。フーシーが襲ったガコの本屋。ミン先生のお宅。地下鉄の改札とホーム。空に浮かぶ館。
アニメだからと省略されたような美術もなく、どれもそこにある理由がちゃんと存在してるであろうと思えるくらい、しっかりと描き込まれていました。

終盤の境界

無音で、背景は真っ白で無機質。
都会のビル群がまるで張りぼてに見えるかのような質感になったのは気のせいでしょうか。
異空間であることをはっきりと認識させられます。

中国の生活風景がわかる

飲食費の支払い

ムゲンとシャオヘイがたどり着いた海岸で立ち寄った飯店での支払いのシーン。
紙幣が水に濡れてぐしゃぐしゃになっていたため、スマホでの支払いをしようとしていました。
中国では電子マネーが普及していますが、この観光地というにもそれほどにぎわってなさそうな(失礼?)この場所で、当たり前のように電子マネーで支払える環境が整っている。
これにはちょっと、おおっと思いました。

地下鉄の手荷物検査場

都市部に来たムゲンとシャオヘイが地下鉄で移動する際、金属探知機と手荷物検査を受けています。
日本では空港でしか見かけないようなそれが、中国では地下鉄に乗るときに見られるようです。
調べると2008年の北京五輪開催時のセキュリティ強化がきっかけのようで、それ以来中国全土にこのような設備が広まっていたようです。
ですので、ムゲンは操っている金属がセンサーに引っかからないように外側を通していました(笑)

まとめ

長々と書いてしまいましたが、一言でまとめるならば「結構面白かった」です。

中国発のファンタジー映画ですが、中華色満載というわけでもなく、能力系のストーリーに慣れ親しんでいる人なら問題なく世界観を受け入れられると思います。
そして愛嬌のあるキャラクターたちがたくさん出てきて、話は深刻なはずなのに所々コメディシーンもあって、気分が重くなりすぎることもありません。

結末については、各キャラクターから見ればいろいろな見方が出来ますが、最終的にシャオヘイの目的、このストーリーの軸である「家(居場所)が欲しい」という願いは達成しています。
(中盤くらいから私はそれを忘れていましたが(笑))
ほどほどの山場もあり、適度な緊張感もありますから物語も楽しめます。

そしてなにより魅力的なキャラクターたちがこの映画で一番のポイントでしょう。
主役格のシャオヘイ、フーシー、ムゲンだけでなく、シュイ、ナタ、ロジュと、様々なタイプのキャラクターが登場しますので、きっと一人はおkに入りのキャラクターが出来ると思います。

機会があればぜひご覧ください。

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